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囲碁道場 初級講座対局 白Iさん五段 vs. 黒斉藤三段(2004年3月16日) 31目勝ち
斉「三段になって最初の対局です。 よろしくお願いします。 今日は三連星でなくスタートし ました。 途中で近くにみえた馬場九段は 、黒6から白23までの形を見て 「新定石だね」と言った後「少 し違うね。ついだね。これだと 2回きかされるから1目取るのが 普通」とおっしゃっていました 。これが新定石とは僕はつゆと も知らず、ちょっと失敗した別 れと思い続きをすすめます」 近「白19にポン抜かずに黒20とツイ だために、 白21アテも利かされ た、というわけですね。 黒20はポン抜くのが正しいです ね。上手になればなるほど、相 手からの「利かされ」を嫌うよ うになります。 一方で自分から相手への「利き 」は大事にしていくことになり ます。すぐ決めるかいなかはケ ースバイケースです。 白23までですか…。部分的には 定石なのかも知れませんが、白 5がすでに来ていて、左上黒の 左辺への発展が制限されている ように見えるので、僕は左上の ワカレは白有利と見ます。 白5がなければ、黒がC-10へヒ ラく余地があるというわけです 。 黒28は面白いですね。 左上の形と同形、ただし黒白は 逆。「あなたの場合はどう打つ んですか?教えてくださいよ」 と言っているように思えます。 それに対して白は左上の黒の応 対とは異なり白29とこちらに割 り込んできました」 斉「黒36、38、40、42と結構僕の手 にこたえてもらい立体感を作っ て行きました」 近「ちょっと白も言うことをききす ぎですね。白37でもせめて白39 のところに打っておくくらいの ものでしょう。白37、39では足 が遅すぎる感じです。 黒42まで、斉藤さんとしては気 持ちいい着手が続いたと思われ ますが」 斉「白45を無視して黒46と、これが 少しおせっかいかなとは思いま したが・・・」 近「黒46自体は左上に展開する白の 厚みを制限しており好点と思わ れます。 逆に白からO-16あたりにいっぱ いにカカられるとがぜん、左上 白の強大な厚みが生きてくるこ とになります。白45に挨拶する とすれば、とりあえずQ-8あた りに打っておくくらいでしょう か。一応これで白27の1子は制し ているふりです。 ま、このあたり、白45に手抜き して、「さ、白27を担ぎ出して みなさい」と、黒が白に手を預 けている、とも感じるのですが …」 斉「白47に対してはノンストップで 押さえ、白49に対してはしっか りとつごうかと迷ったところで す」 近「ここはいくつかのワカレが考え られますが、黒52までの応対は 斉藤さんらしい手厚い打ち方で いいと思います」 斉「黒56では相手はつなぐと思った のですが・・・ これで白27を取りこみ、つなが った3目の白を攻めつつ、左上 の白の厚みを消しにいこうと考 えていました。 ところが白57ときました。 右下を地にして、中央を荒らせ ば「黒良し」と思い押さえまし た」 近「黒56がそっぽでしたね。 ここはS-12にツケておけばまだ 右上白に生きはありません。 そう打たれていたら生きるんで すかねえ?この白。部分的には 死んでますが、黒の包囲網がや や弱いため、撲殺するには黒も 腕力のいるところでしょう。 で白57はある意味喜んで打った のではないでしょうか。黒60に ツキ抜いたのは小さくはないで すが、白としては止むを得ない ところでしょう。 黒56でもっと右上を追求して白 を閉じ込めたあとで右辺に浮か ぶ白(白43、45)をまとめて攻め るのがよかったように思います 」 斉「白67の手が僕には救いでした。 黒68と伸びて、相手の2目を取 りこみ成功。 白69には黒46を打った時から行 きたかったところですが、黒68 と比べてどうでしょうか? 『相手の厚みに近づくな』とい う事で黒68を優先したのですが ・・・」 近「白67は仕方ないでしょう。黒P- 11にキラれてしまいますから。 黒68で…成功…ですか…。 斉藤さん、いらんですよ、こん な手は。見事な一手パスですね 。こんなところへいくくらいな ら、B-4トビサガリ、Q-3オサエ 、F-9ケイマといった手が地で 大きいあるいは好点。 こんなにまだ打つところがごろ ごろしているところへ黒68とは …。本局ワーストの一手と断言 したいと思います。 せめてL-9一間トビくらいは打 ちたい。黒68は打たずともすで に白2子は取れています。強引に 白が動きだすのは行く手に黒40 や42が待ち構えており無謀です 。黒68が白には救いだったでし ょう」 斉「黒40からのケイマも考えたので すが、黒72を選びました。 白73とどちらにしようかと考え たのですが、白が薄い方という ことで黒72です。 白73と打たれ、やはり両方は打 てませんでした」 近「まあ仕方ないです。 見合いっぽい。 ただ僕でしたら黒72ではQ-2とし ぶとくいきたい。 白手抜きは次に黒M-2と伸びる味 があります。この味を嫌って白 が右下に手入れしますと、黒は 左下サガリも打てるわけです」 斉「黒78で先手を取り、さっきの薄 いということで、ここに打ちま した。自分の地を広げつつ、相 手の石の分断。 相手の出方により、左の石を攻 めるか?中央の白地を荒らすか ?という考えです」 近「左の白石は攻めはあまりきかな いでしょう。あまり攻めのうま くない斉藤さんならなおさらで す。 黒78はむしろ、白から逆にC-13 とカドに来られた場合と比較し て、地として大きい、と考えら れます。好点でしょう。 それにしてもこの局面で白77は 小さいですね。こんな悠長なこ とやってるような形勢ではない と思うのですが」 斉「ここから白反撃を食らいます。 白85で黒36の上から押さえられ たらどうしようかと思っていた のですが、白91まで。黒90と頭 を出したので、そんなに被害は 少ないでしょうか?」 近「これは反撃ではありません。 黒模様が大きいので浅く消した 、という感じです。 先に出てきた黒36、38、40、42 のセットが黒模様を作っていま す。これを生かすために黒74あ たりでF-9あたりに打って模様の 谷を深くしておくのもあったと 思います。 白79以下、白はこの模様を制限 したかったわけです」 斉「今回一番迷ったのが次の黒92で す。読んではいないのですが、 どこかで白を分断できるのでは と打ちました。 この場面ではどこが良かったで しょうか?」 近「ヨンでください。 ヨマずに打った白103までの結果 は結構黒最悪の形です。 ま、これで形勢が動いたわけで もないので、あくまで部分的な ことですが」 斉「黒104までで変な形になってしま ったので、黒106でごまかしにい きます。黒104、106は捨てて、 120と頭を出します。 ここから少しよせが続きます」 近「黒106がなかなか落ち着いた手で すね。黒110も機敏。 黒118までの打ち方はなかなかい いのではないでしょうか。 ここまで決めてからの黒120は当 然の一手ながら、これで黒の優位 はなかなか動かないでしょう。 あとはヨセられても5〜10目は黒 に残るでしょう」 斉「白147はいやな感じでしたが、 どうにかなりました。 白161では白147が逃げ出すか、 黒104、106の2目を取りにくる かと思っていたのですが・・・」 近「白161の時点では既に黒2目 (黒104、106)は取れないですよ。 白が黒2目を取るつもりなら、 白151でF-8にアテるしかないで す。黒150もE-8で十分です」 斉「ここではいつのタイミングで打 ったのか忘れてしまったのです が、白165を打つまでに、黒78か ら一間トビを黒が打っていて、 下の黒38からのヨセは白から打 っていました」 近「???。ま、すでに形勢には関 係なさそうですので」 斉「白145からはいつものように相手 のミスで大差の勝ちとなりました 」 近「なるほど、いつものパターンで すね。形勢が悪いと思って白も 一生懸命になるあまりに白165 なんて手を打ってしまうんでし ょうが、こんなところ(右上)が あっさり手になってしまうなん て、五段ならもうちょっとヨン で欲しいですね。 この碁は斉藤さん、比較的よく 打てていると思います。 左上がやや悪い、黒56がそっぽ 、黒68が一手パスというのはあ りましたが、好点にも結構石が いっていました。 逆に白が右下で全部まともに利 かされるなど、黒石のほうがよ く「伸びている」感じで、120手 までで既に勝敗は決しています。 右上の「事件」は白が投げ場を 求めたというのなら格好いいの ですが、最後まで打って31目負 けとはちょっと白も往生際が悪 い気がしますね。 この五段の方でしたら、僕でし たら3子置かせても勝てそうです 」