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囲碁道場 初級講座対局 Oさん三段 vs. 斉藤二段(2003年9月2日) 中押勝ち
斉「今回は最後まで覚えることが出来 ませんでした」 近「べつにかまいません。100〜150手 までを並べて修正する、というの で十分です。 ヨセより序盤の布石のほうが碁の 骨格となるわけですから重要です 。ヨセの名手、と言われても、そ のヨセまでたどり着けなくては意 味がないですから」 斉「いきなりの白6、どうしてよいか わからず、黒7へ」 近「白6とは白もずいぶんな変化球で すね。『広いほうから打ち、相手 に狭いほうを打たせる』という布 石の基本的発想から完全に外れて いる手で、(布石の探求を目的と した実験的な意味でなく)勝つつ もりでまじめに打った手とすれば 、これはもう三段格の着手とは思 えません。 自らも三連星を敷く、17-Oにカカ ッていく、など、広いところはい くらでもあるはず。 対する黒7、ソッポです。 三連星に土足で入ってきた白です 。攻めていきたい。 攻めることで自然に厚くなり地が ついていきます。相手に簡単にさ ばかれないように例えば10-Rの鉄 柱とか。 黒11,13と、黒石が2線に2つ。左 下の黒石は安定し、白8の根拠を 奪っている意味はありますが、白 8の石は軽く、攻めの対象にはし にくい。 三連星の石の高さ(4線)と左下黒 の石の低さ(2線)と、何やら黒の 布石に一貫性が感じられません 。地でいくのか、模様でいくのか 。布石には一般には一貫性を持た せたほうがよいとされます」 斉「碁会所で黒17が悪手と聞きました が、確かに方向が間違っています ね」 近「その前に黒15がいかにも利かされ な感じ。手抜きで白6の石を攻め たい。黒15は下辺黒を逃げる手で もなく、白8を攻めている、とい う手でもない。 白8はいざとなれば捨ててしまえ ばいいのです。黒は右辺に1,3,5 と3手かけている、 すなわち右辺を有効に使いたいと いう意志表示で、白6を攻める手 が大きいと思います。 黒17、本局一番の黒の悪手。 この白石を簡単に治まらせては黒 の大事なはずの右辺は台無しです 。下辺から中央への黒模様を意識 した?という解釈も出来なくはな いですが、9-Rに断固押さえる。 白が11-Oにフクらんできたら黒は 10-Sとアテる。白がツゲば黒は 9-Oにツイで白4子はダンゴ石。 白が11-Sとコウにはじけば取れば いい。白がどこに打とうと黒はそ のままコウをついでしまえばいい のです。 白20ではなんで9-Sとハネないん ですかね」 斉「白22〜26まで地を作られました」 近「ここは大したことはないです。 むしろ右上黒がしっかりした利益 のほうが大きいです。白に地を作 られたのは黒17がもたらした影響 が全てです。 下辺黒の模様が気になってきた白 が白28とカカってきました。 黒29がまたひどく甘い手で、本局 第2の黒の悪手としておきます。 白30のところにハサみたいのです 。もし白がそれで3-Rと三々に入 ってこれば白3-Oと遮断し、右下 白は生かしても黒8-Jあたりにケ イマでもしておけば利かされっぽ かった黒15も顔が立ち、下辺から の黒模様が深い。 下辺白も簡単に治まらせて、しか も黒29と受けた右下黒は白9-Sに ハネられればすそあきっぽく、黒 29が小さいところを囲っている理 屈。 白32では2-Oとケイマにすべりた い。 白34でまたも高バサミしてきまし た。高バサミは黒39とスベられる と根拠を失います。 17-Jあたりに低くハサむとなにか 都合が悪いのでしょうか。低いほ うが圧迫されやすい反面、根拠を 持ちやすい利点はあります。 状況によりどんなハサミがいいの か都度考えなくてはなりません」 斉「黒41をそのままにして黒45といき ました」 近「なぜそのままに…。黒45で14-Jと ノビ切り、上辺白に圧力をかけた いです」 斉「黒65までで脱出成功」 近「黒45,47,49と気持ちよく左辺を割 りましたね。 黒73で4-Kとアテ白に3-Kとツガせ れば先手で左辺と左下の黒はつな がっています。黒73などという小 さな手は省け、9-Sとかの大きな サガリに回れます。黒75では18-K と打ち、左上黒の安定と上辺白を 完全に浮かせる、という手を私な ら打ってみたい。 白82では13-Jでしょう。上辺の白 の安定を早く目指さないといけま せん。 白42の石を下手に動き出すものだ から上辺白を簡単に攻められ、 黒101で右辺から中央への大きな 黒地ができました」 斉「黒101で中央を黒っぽくして・・・ ここでは黒19からのサガリも考え たのですが、黒103で下がってお けばよかったと今は思います」 近「黒103でサガるのはタイミングが 悪いですよ。実戦の受けのほうが 大きいです」 斉「黒125は引いておくべきでした」 近「そうですね。 黒129は11-Mとアテるのが正しい 。それで右辺から中央の黒地は安 泰です。 白142は無意味で、単純に18-Lと トンでてよかったでしょう」 斉「黒149は甘かったですよね」 近「17-Lと一本出ておきたいですね」 斉「黒153で中央を確定地にしました。 今回はここまでしか思い出しませ ん。最後はダメ詰まりで白46の大 石を取り中押勝ちでした。 その大石を取らなくても10目ぐら いは勝っていた形勢だったと思い ます」 近「なるほど…」 斉「最初から何が何やらよくわからな い碁でした」 近「そうですね。白6の右辺をはじめ として、上辺、下辺と黒には攻め れる白があちこちに転がっている のに全てに手をさしのべました。 白も自陣の拡大にはなんら努力し ていないため、互いがはっきりリ ードすることもなく、ずるずると 150手まで来てしまいました。 この『囲碁道場』では斉藤さんの 4連勝ですが、いずれも相手の中 盤以降の弱さを感じますね。 手が進むにつれて打ち方が分から なくなってくるというか、手が見 えてないというか…。 相手の方々はみな実戦不足を感じ ますね」