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囲碁道場 初めての囲碁 加藤慎一編(2001年11月2日) 14目勝ち
加藤君の第二弾です。 まず今回協力を頂いている加藤君です が本当に碁については素人です。 その為前回のコメントで、むずかしい 所があったら教えて欲しいとお願いし たところ、『「こずむ」とか「はねる 」とか「つけ」「よせ」など専門用語 がわからない』との事でした。 それらを今から説明したいのですが、 実は僕もよくわかっていないのです。 まず「こずむ」ですが、ななめ下に打 つことですか? 「はねる」は、お互いの石が縦にくっ ついている時に下方で相手側にひとつ 出ることでしょう。第一譜の黒34や白 53がそれにあたると思います。 「つけ」は相手の石に直接接近して打 つことです。 「よせ」は碁はが始まって終わるの後 半部分の事を言います。 斉「近藤六段こんな説明でよいのです か?」 近「そうですね。だいたい斉藤さんの おっしゃるとおりだと思います。 でも正確ではないです。というよ り、これは言葉で説明するのはと ても難しい。 囲碁には「コスミ、ハネ、ツケ、 トビ、ノビ、ケイマ、グズミ、ナ ラビ」といったいわゆる”専門用 語”がいくつもありますが、それ らは特に覚える必要はないと私は 考えています。「覚える」という よりは、形を見て自然に「覚る」 ものなんです。 いったん覚わってしまうと「なん だ、言葉どおりじゃないか」って 感じるようになりますよ。 出来た形がいかにもその言葉ぴっ たりなんですよ。私はコメントの 時にあえてこういった”専門用語 ”を「黒34にハネて…」といった 具合に使っていこうと思ってます 。加藤さんは今そういった”専門 用語”を理解出来なくても何度も 聞いて碁を打っているうちに自然 に分かってきますよ。 私もこういった用語をわざわざ勉 強したことなんてないし、その必 要もないです。こんなコメントで は無責任なのかなあ。 斉「いえいえそんな事はありませんよ 。では、解説にはいります。 布石が前回と幾分かわっています 。前回より随分良くなっていませ んか? 黒22がどうかなって感じがします が、黒32、46の押さえる方向は良 いですね。黒36は小さいですね、 ただその失敗を生かしてか、左下 では、黒48と打っています。これ 結構形決まっていますよね?」 近「黒20までで既に何やら難しい局面 になってますね。 発端は黒6のツケ(白3という相手の 石につけていますよね。だから” ツケ”)。白19まで白に右上で陣 地を取られてしまうと、黒4が何の ためにある石か分からなくなりま す。黒6では白7のところへコスミ ツケ、白が黒6の位置へ打つ、さら に今度は右下に目を向け同じよう に白1の下にコスミツケ、白が白1 の左へ打つ。そこで黒16-10の位置 にドカンと打ち込む。こうなると 白は右上、右下両方の石が攻めら れ、黒好調…となります。 いろいろ打ち方のあるところです が、これも一つの打ち方。黒22は 悪手です。左下、白5と打たれっぱ なしになっているところがあるの で、ここを黒6-17とケイマに受け ておくのが大きいし堅実です。黒 32の方向は正しいのですが、黒34 が悪手です。右上黒がちょっと頼 りない形をしてますので、これを 強化する意味でも、白29を攻め立 てる意味でも、黒10-3あたりに打 つのがいいと思われます。黒36の サガリは1譜でもよく見かけました がこれはたいてい悪手になります 。ここを打つのならば黒34の右へ がっちりとツイでおく(つないでお く…の意)のが、あとで白35の上へ ハネるヨセが残せていいのです。 白37に打たれてしまうと、白は白 29、21の両方の石がある程度安全 になってしまい、そうなるとこれ らをさえぎっている左上の黒がた だの白からの攻撃目標になってし まってよくないのです。 白43と左下を両ガカリされてしま うと、ちょっと白ペースですね。 黒48はいいです。ただ黒26の位置 が10-16の星の位置にあると、白43 の石を大きく攻めている感じで黒 48はいいのですが、実戦ですと白 9-17あたりに打たれてしまうと白 43がちょっとくつろいでしまい、 黒48の価値がちょっと落ちます」 斉「接近戦での黒52、54、56などは、 もっと白石から離れて打って、中 央に出さないようにした方が良く ないですか?傷が残るうち方をし ているように見えるんですが?」 近「そのとおりだと思います。黒48を 生かすためには黒50で白51のとこ ろに打って下辺の黒模様は大きい ぞ…と主張したほうがいいと思い ます。白53までとなった形は「裂 かれ形」。黒48と黒52が裂かれて しまってこれはよくない。 斉藤さんが中央に出さないほうが よい…とコメントしてます。これ は的を得たコメントで、黒の加藤 さんとしては中央に石が向かうの がよく、封鎖されるのは一般によ くない。いいかえれば相手は中央 に出さないほうがよい…というこ とになります。 封鎖されるのは良くない…という 一般論は覚えておいてください。 なぜ良くないかはこれから加藤さ んが強くなるにしたがって分かっ てくると思いますよ」 斉「黒80と一間飛びでは切られること に気づいてほしかったですね。 一間飛びを使う場面は、周りの状 況をよく気をつけた方が良いと思 います。あと白121に対して黒122 とソッポ(無視)したのはいただ けないですね。白63、65はもう取 れている石だから」 近「ちょっと前に戻りますが、白67と 打たれた段階で、左下の黒がかな り危険です。白のコンピュータは 3級レベルとのうわさですが、人間 の3級が相手ならば、左下黒はまも なく取られてしまうでしょうね。 誰がコンピュータを3級に認定した のか知りませんが、無責任な認定 ですよねえ。 話は戻って…。黒80は白79の下に 打つしかないところでしょうね。 でもちょっとつらい。こんなにな ってしまったのは、やはり黒50が 悪手だったからなのです」 斉「白(コンピュータ)の打つ手がよ くわからないのですが、黒126、 128良い手ではないですか?」 近「白(コンピュータ)の打つ手が訳わ かんないですね。白107のサルスベ リなんか、コンピュータが壊れて いるのかと思いましたよ。 黒126,128でなんとか左上黒は命が つながった感じです」 斉「黒148ももったいないですね。これ もさっき説明したみたいに白13、 15はもう取れている石ですよね。 あと、黒170ですがこれって白171 の場所に打てば白生きがあったで しょうか?」 近「加藤さん、黒148は正解でしたよ。 ここを手抜きしますと、白148と出 られて黒15-6へ押さえる。すると 白15-4へアテが来ます。ここで黒 8の左にツイでも白141の右に打た れて黒6子全体がアタリとなり、白 17のところのコウを争うよりほか なくなります。このコウに負けれ ば右上の黒が全滅してしまいます 。斉藤さん、初段なのですから、 もっときちんとヨンでくださいよ 。 黒170については、斉藤さんのコメ ントのとおりに加藤さんが打って いれば左上の白は死んでいます。 実戦のように白171となってしまう と、もうこの白を殺すことは出来 ず、黒1-4、白1-5、黒1-2、白2-3 、黒1-3まで黒からセキにすること しか出来ません(セキの意について は後述します)。しかも黒が後手を ひいてしまいます。ヨセで後手を ひくのはよくないです。1譜でもふ れたとおり」 斉「黒180では白181に打ちたかったで すね。黒184では白185の場所です ね。しかし、黒208は良く気が付き ましたよね。加藤君はまだ石の生 き死にがまだ良くわからないかと 思っていたんですが。 黒216では白217のところに打って コウにしたら面白かったんではな いですか?」 近「黒208、3目ナカテですね。ナカテ( 中に手があるから中手といいます) は4目ナカテ、5目ナカテ、6目ナ カテまであるんです。 こういった基本的な石の生死は初 心者用の詰碁の本なんかで普段か ら練習しておくのがいいです。そ うすることにより実戦でもいろい ろ手が見えてくるようになって面 白いですよ。 黒216で白217に打ってコウにする という斉藤さんの指摘は右上の白 を全滅させることはできませんが 、10目以上の大きなヨセになりま す。コウ材も加藤さんがたくさん 持っていますので、有効な手段と 思います」 斉「あとは最後の黒288ですよね。 これは白177の右に当りをしてから 黒290と打つ。そうすれば全部頂 きだったんですよね」 近「斉藤さんのコメントのとおり。白 177の右にアタリをし、白がつなげ ば、黒290に打つ。この黒290を白 が取ろうとして白291にアテても、 黒292とサガれば、白はダメヅマリ でもうこの黒2子が取れないのが確 認できると思います。 ヨセになってダメが詰まってくる といろいろ手が生じてくるものな のですよ。ちなみに実戦白293まで となった下辺の形、これは黒から も白からも手を入れることの出来 ない形で「セキ」というのを加藤 さんはご存知だったでしょうか。 「セキ」はこのままの形で終局し ます」 斉「最後に今日の棋譜を見て、2、3点 だけを手短にアドバイスしてもら えますか。僕が思うには、すでに 取れている石に手をかけすぎのよ うな気がします」 近「ううん、そうですねえ、それより もやはり布石段階での指摘をして みたい気がします。まず一つ目は 左上、左下の黒がいずれも白21,29 、白5,43と両ガカリされてしまっ たこと。両ガカリされると黒は威 張れないので、されるまえに受け ておくか、カカられた石(白5、21 の石)をはさんで攻める…などして みたいですね。 2つ目は自分は中央に頭を出し、相 手を封鎖するのはいいということ 。自分が封鎖されるのは一般にあ まりよいことではないというのが 重要です。 最後は白53までにあったような裂 かれ形にならないこと、以上です 」 斉「前回に比べてどうでしょうか?」 近「ちょっとよくなったかな…って感 じもありますが、今回は60手を過 ぎたあたりからの白の手があまり にもひどく(黒138のアテにつがな いなどその最たるもの)、それに助 けられた感があります。 加藤さんがちょっと碁に入れ込め ば、じきにコンピュータなど粉砕 できると思いますよ。がんばって ください」 斉「近藤六段ありがとうございました 。まだまだ加藤君には12級で打っ てもらいます。僕は加藤君が攻め るところも見たい気がします」